株式投資の物理学:自由エネルギーとエントロピーで読み解く「お金の正体」

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「株式投資」というと、多くの人はチャートや決算書といった「数字」の操作だと思っています。しかし、視座を経済レイヤーから物理レイヤーまで下げてみると、そこには全く別の景色が広がっています。

投資とは、「自由エネルギー」を操作し、エントロピー増大の法則に局所的に逆らう「物理現象」です。

今回は、物理学(熱力学)の定義に論理を接地させ、投資という行為を根本から再定義してみましょう。


1. そもそも「自由エネルギー」とは何か?

まず、すべての土台となる「自由エネルギー(Free Energy)」を定義します。これが分からないと、お金の本質が見えてきません。

物理学において、ヘルムホルツの自由エネルギー FF は以下の式で定義されます。

F=UTSF = U – TS

  • UU(内部エネルギー): そのシステムが持っている「全エネルギー」の総量
  • TT(温度): 環境の激しさ
  • SS(エントロピー): 乱雑さ、無秩序さの度合い
  • TSTS(束縛エネルギー): 熱振動としてランダムに動くだけで、役立つ仕事に使えないエネルギー

つまり、自由エネルギー FF とは、全エネルギー UU から「無駄なエネルギー TT」を差し引いた、「実際に自由に使って仕事ができるエネルギー(有効仕事能力)」のことです。

経済における「お金」=「純粋な自由エネルギー」

これを経済に置き換えるとどうなるでしょうか?

  • 工場や在庫(UU): 資産価値はあるが、すぐに動かせない(エントロピー SS や維持コスト TT が絡む)。
  • 現金(FF): 何の制約もなく、即座に労働や設備という「仕事」に変換できるポテンシャル。

具体例で比較してみましょう。

【具体例】「10億円のビル」vs「10億円の現金」

  • 工場や不動産(UU は巨大だが、TSTS も大きい):あなた丸の内に10億円のビルを持っているとします。これは巨大なエネルギー(UU)です。しかし、急に「今すぐ100万円の支払いをせよ」と言われても、ビルの一部を切り取って払うことはできません。ビルを「支払い能力(お金)」に変えるには、買い手を探し、内覧し、登記し、手数料を払うという数ヶ月の時間と莫大な労力(TSTS)がかかります。つまり、ここには「エネルギーはあるが、拘束されていて自由に使えない」という状態があります。
  • 現金(FFUU とほぼ等価):一方、銀行口座にある10億円はどうでしょうか。これを動かすのに、買い手を探す必要も、数ヶ月待つ必要もありません。スマホをタップするだけで、一瞬にして地球の裏側へ送金したり、従業員を雇ったりできます。ここには摩擦(TSTS)がほぼ存在しません。

投資家が持っている「お金」とは、物理的には「エントロピーによる拘束(TSTS)が極限までゼロに近く、全エネルギーをロスなく仕事(FF)に変換できる状態」です。

だからこそ、企業(工場=UUの塊)は、喉から手が出るほど投資家の「お金(FF)」を欲しがるのです。彼らは「凍りついたエネルギー(資産)」を溶かして動かすための「着火剤」を求めているのです。

2. 投資はお金(FF)を何に変換するのか?

投投資家が企業にお金を投じるとき、その純粋な自由エネルギー FF(流動相)は、企業という系の中で物理的実体を持つ4つの「固定相」へと相転移します。これらは、企業という熱機関を動かすための必須パーツです。

  1. 生化学的自由エネルギー(労働力):従業員の細胞内で生成されるATP(アデノシン三リン酸)です。あなたの投じたお金は給与として従業員に渡り、食事(化学エネルギー)を経て、脳のニューロン発火(思考・判断)や筋肉の収縮(作業)という「高度な制御エネルギー」に変換されます。
  2. 物理的エクセルギー(動力):電力や化石燃料です。これらは熱力学的に「仕事をする能力」が高い状態にあり、サーバーを回したり、工場の巨大なモーターを駆動したりするための純粋な「駆動力」として機能します。
  3. 化学ポテンシャル(原材料):μN\mu N(化学ポテンシャル×粒子数)。鉄鉱石、シリコンウェハー、原油など。これらは単なる物質ではなく、加工されることで価値を生む「高いポテンシャルを秘めた基質」です。投資は、この物質を確保する力に変わります。
  4. 構造的ネゲントロピー(設備・インフラ):高性能な半導体製造装置、最適化された物流網、整理されたオフィス。これらは、過去に誰かが膨大なエネルギーを使ってエントロピーを下げた(整理・秩序化させた)「秩序の缶詰」です。設備投資とは、機械を買うことではなく、この「低いエントロピー状態(過去の仕事の蓄積)」そのものを購入し、時間をショートカットする行為です。

投資とは、手元の流動的な FF(お金)を、これらの「物理的な仕事能力を持つ実体」へと固定化(相転移)させ、将来の生産活動に備えるプロセスなのです。

3. エントロピー減少のメカニズム:なぜ企業は「秩序」を作れるのか?

ここが最大の疑問点です。熱力学第二法則は「エントロピー(無秩序)は増大する」と言っています。では、なぜ企業は「iPhone」や「高層ビル」のような、極めて秩序だった(低エントロピーな)ものを作れるのでしょうか?

そのメカニズムは、「マクスウェルの悪魔(Maxwell’s Demon)」と呼ばれる情報熱力学の概念で説明できます。

■ マクスウェルの悪魔とは? 19世紀、物理学者マクスウェルはこう考えました。 「二つの部屋の間に小さな扉があり、そこに『分子の動きを見極める小人(悪魔)』がいるとする。彼が『速い分子』だけを通し、『遅い分子』を弾き返すという選別を行えば、片方の部屋だけ温度が上がり、勝手に秩序(温度差)が生まれるのではないか?」

自然界では起こり得ない「秩序の生成」も、「情報(分子の速度を知っていること)」を使って「選別」を行えば可能になるという理論です。

■ 企業=巨大な選別装置 企業も物理的にはこれと同じ装置です。 混沌とした市場から、「良い人材」「良い素材」「正しいデータ」だけを選別してドアを通し、それ以外を弾き返すことで、内部に高い秩序(製品)を作り出しています。

具体的には、以下の情報熱力学サイクルを回すことで、この「悪魔の仕業」を実現しています。

  1. 測定(Measurement): 市場調査や品質管理。これは悪魔が「分子の速度を見る」のと同じです。対象(部品や顧客ニーズ)の状態を観測し、情報を獲得します。
  2. フィードバック制御(Feedback Control): 獲得した情報に基づき、ドアを開閉します。つまり、エネルギーを使って物質を特定の形に並べ替えます(採用、加工、プログラミング)。これがエントロピーの減少(秩序化)です。
  3. 情報の消去と熱放出(Erasure & Heat): ここが物理的に最も重要です。悪魔(企業)のメモリは無限ではありません。次の分子(新しい市場の変化)を見るためには、古い情報を忘れる(消去する)必要があります。 ランダウアーの原理により、情報の消去(意思決定による選択肢の破棄・リセット)には、必ず物理的な熱の発生が伴います。

■ なぜ「情報の消去」が必要なのか?

ここで、「企業は情報を蓄積する場所だから、消去なんてしていないのでは?」という疑問が浮かぶかもしれません。確かに、ノウハウや特許といった「有益な情報」は蓄積されます。

しかし、物理学的に「意味のある情報(秩序)」を純粋な形で蓄積するためには、入ってきた膨大なデータの中から「無意味な情報(ノイズ)」を選別し、大量に捨て続けなければなりません。

これを「砂金採り(情報の蒸留)」でイメージしてください。

  • 入力(Raw Data): 川からすくった大量の砂利混じりの土砂(高エントロピー)。
  • 選別(Processing): 企業活動。会議や分析を行い、価値あるものを探す。
  • 消去(Erasure): 99%の砂利(ノイズ、不要な案、失敗データ)を川に捨てて忘れる。
  • 蓄積(Structure): 手元にキラリと光る「1%の砂金(勝ち筋・製品)」だけが残る。

ランダウアーの原理が教えてくれる物理的真実は、この「砂利を捨てる(不要な情報を忘れる)」という選別作業にこそ、物理的な熱エネルギー(コスト)が発生するということです。

企業活動とは、「大量のノイズ(無駄な情報)を熱として外部へ排出し(情報の消去)、その反作用として抽出された純度の高い『結晶(有益な構造情報)』を内部に蓄積するプロセス」なのです。

優秀な企業が高収益なのは、情報の蓄積量が多いからだけではありません。この「ノイズを捨てる(意思決定する)熱効率」が極めて高いシステムだからなのです。

企業活動とは魔法ではありません。 「情報の獲得と選別(悪魔の活動)」によって局所的に製品という『結晶(低エントロピー状態)』を析出させ、その代償として大量の廃熱(計算コストや疲労)を外部環境へ捨てている物理プロセスなのです。

「富とは最終的に、物質(アトム)の蓄積ではなく、『知識』である。

資本主義とは、エントロピー(無秩序)に対する、情報(秩序)の戦いなのだ。」

―― ジョージ・ギルダー 著『Knowledge and Power(知識とパワー)』より

4. 利益の正体と投資のサイクル:なぜ「余剰」が生まれるのか?

では、なぜこのプロセスで投資家が儲かる(FF が増えて戻ってくる)のでしょうか?

それは、企業が生み出した「低エントロピーな製品」が、顧客にとって「生存にかかる自由エネルギーコスト」を劇的に圧縮してくれるからです。

物理的な「差分」が利益の源泉であることを、2つの具体例で見てみましょう。

【具体例A】コンビニのおにぎり(物理的エネルギーの圧縮)

あなたが昼食におにぎりを食べたいとします。

  • 自力でやる場合(High Cost):稲を育て、収穫し、脱穀し、釜で炊き、海苔を養殖して乾燥させる…。これには数ヶ月の時間と、あなたの筋肉による膨大なATP(生体エネルギー)の消費が必要です。物理的に見て、あまりに効率が悪すぎて餓死してしまいます。
  • 製品を買う場合(Low Cost):コンビニは、巨大な農業機械と物流網(化石燃料という安価なエネルギー)を使って、極めて効率よくおにぎり(秩序)を大量生産しています。あなたはわずか150円(数分働けば稼げる自由エネルギー FF)を支払うだけで、数ヶ月分の労働エネルギーを節約できます。

【具体例B】Excel / 表計算ソフト(情報的エネルギーの圧縮)

あなたは1万行の売上データの集計をしなければなりません。

  • 自力でやる場合(High Entropy):紙とペンとそろばんを使うと、計算には数週間かかり、途中で計算ミス(エントロピー増大)も多発します。脳はグルコースを枯渇させ、過熱(知恵熱)します。
  • 製品を買う場合(Low Entropy):Microsoftにお金を払ってExcelを使えば、1秒で正確な結果が出ます。ソフトウェアという「論理の結晶」を買うことで、あなたは脳の演算エネルギーと寿命(時間)を劇的に温存できます。

利益の発生メカニズム:ΔF\Delta F の分配

ここで「利益」が生まれます。

  1. 顧客のメリット: 自力でやるより圧倒的に楽(エネルギー効率が良い)だから、喜んでコスト以上の対価を払う。
  2. 企業のコスト: 効率的なシステム(散逸構造)を持っているので、顧客が自力でやるより遥かに少ないエネルギーで作れる。

この「顧客が節約できたエネルギー」と「企業が費やしたエネルギー」の差分(マージン)こそが、社会全体で浮いた「余剰自由エネルギー」です。

投資家が受け取るリターン(株価上昇・配当)とは、単なるマネーゲームのあがりではありません。

「人類全体のエネルギー効率を物理的に最適化したことへの報酬」として、系から吐き出された正当なエネルギー分配なのです。

まとめ:物理レイヤーで見る投資の定義

ここまでの議論を統合します。

株式投資とは、保有する「純粋な自由エネルギー(お金)」を系(企業)に注入し、マクスウェルの悪魔」としての機能(情報処理による物質の秩序化)を駆動させ、環境に廃熱を捨てながら局所的なエントロピー減少(製品化)を実現し、その結果として生じた「余剰自由エネルギー」を回収する熱力学的サイクルである。

「お金」を「自由エネルギー」と定義し直し、企業活動を「エントロピー排出による局所的秩序化」と捉えることで、投資の本質がより鮮明になります。

私たちは単にマネーゲームをしているのではありません。宇宙のルールである熱力学の法則の中で、エネルギーの流れを最適化しようともがく、物理的な存在なのです。

※本記事の一部、または全体はGeminiによって生成されています。

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